第七話 ガマガエル

 砥沢の部落に住んでいる九ちゃんは、カエルが大の苦手である。サイズがでっけぇガマガエルは無論のこと小指ほどのアマガエルも恐ろしいのである。本物はおろか写真でも石で造った置物でもだめだ。

 さて、山の仕事であるが仕事場に向かう山道にガマガエルがいることがある。そのガマガエルを見て跳びこえることはできない。道の上でも下でも通れる余地があればそこを通って行く。あいにく片方が絶壁でもう片方は崖のことがある。そうなるとガマより先に行けなくなってしまう。仲間がいる時はガマを片づけて貰えるが一人の時はどうしようもない。とりあえず離れたところでガマ様がどこかに行ってくれるのを待つことになる。1時間くらい待っても動かない時は実力行使にかかる。あるときは石を投げてみる。ガマを見ながら投げつければ命中率は高いと思うが、ガマを見ることができないから、取りあえず眼をつむってえいやっと投げる。眼を恐る恐る開けてみるとまだそこにいらっしゃる。今度は少し大きい石にするが石がでかいとその分、ガマに近づくことになり恐怖が増すが勇気を出して投げる。また、失敗。今度は特別でっかい石を両手で放り投げた。グエッと言う音がする。恐る恐る眼を開けるとガマ様が直撃を食らって仰向けに倒れていらっしゃる。こうなるとお手上げでありそのまま午後まで仕事に行けないこともある。ある時は竹などを切ってきてその竹で追い払おうとする。眼をつむってえいやっとやるが中々ガマを叩き落とせない。しょうがないから竹を少し切って短くする。また失敗。また、竹を短くする。どんどん短くなって3m弱になるとそれ以上は近付けないので竹を放り出して座りこんでしまうという。仕事仲間は苦笑しながらもそんな九ちゃんを楽しんでいる。

こまったもんだめぇ。

(尾沢のかぢか寄稿)