第三話 自動ドア

都会に自動ドアなるものが出始めたころの話である。当時、南牧はおろか下仁田にも富岡にも自動ドアはなかった。

親父が仕事で前橋に行き、数人でレストランに入った。そこは自動ドアだった。親父は知っていたが、初めてだった人もいて感心していた。遅れて来た重さん(仮名)が、ドアが閉まる寸前に入ってきて、仲間に加わった。重さんの後ろにも他の人がいたから、ドアは締まらずに済んだ。食事が終わって帰るときに、また重さんが最後になった。ドアを閉めようとしたが、そこに立っているから閉まらない。躍起になって「渋い」とか言いながら、力を込めて閉めようとする。親父や仲間はニヤニヤしながら、何も言わずに見ていた。くたびれて離れたら戸がひとりでに閉まって、たまげるだんべと思ったのである。でも、なかなか重さんはあきらめないので、呆れて放っておいて車まで来た。しばらくすると、汗だくの塊が帰ってきた。「どうしたい?」「やっと閉まった」と息を弾ませながら重さんは言った。レストランの戸が壊れたかどうかは定かでない。

 

【尾沢のかぢか寄稿】

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